大地と自然をテーマに、意表をつく仏料理
【エスピス】神戸・三宮

関西・オンナの美酒佳肴

大地と自然をテーマに、意表をつく仏料理

【エスピス】神戸・三宮 

 神戸三宮、生田神社界隈、夜の賑わいも好きだが、人通りが少なくて静かな昼間に出かけるのもいいもの。神社の西側エリアにあるフランス料理店「エスピス」は、南フランスで腕を磨いた江見常幸シェフの店だ。江見さんの料理を初めて食べたときの驚きが忘れられず、同じ業界の女性たちとのランチに予約を入れた。

 

三種類の前菜
はじまりは三種の前菜から

 

 まずは前菜。木の幹が目の前に置かれた。なんのオブジェ?
 マネージャーでソムリエの吉間崇行さんが笑顔で「この上に料理がのっています」と言う。木の皮に見えたそれは、シイタケのチュイールだった。粉末にして薄く焼いたシイタケで甘酸っぱい玉ネギをサンド。シイタケと玉ネギ、それぞれの香りと味が広がる。ウニ型の器にはカボチャのムース、これはちょっとスパイシー。「器の石ころの中にただ一つだけヒジキのシューが紛れ込んでいます」と吉間さんに言われて、探し出すのもまた楽しい。

 葉巻に似せた細長いものはシェフのスペシャリテ、リンゴのチュイール。中にはリンゴジュレ、両端にはブータンノワール。細かく砕いたチョコレートを付けて口に運ぶと、まるで葉巻をくわえたようなポーズだ。ガッツリ食べるのは苦手なブータンノワールだけど、シナモンの風味とリンゴの甘みと一緒だと、これはイケる。

 

ムースの中から具が出てくる
ムースの中から具が出てくる

 

 グレーの丸い石のように見えるのは、淡路玉ネギのムース。中にはカツオとビーツ、玉ネギの甘みがふんわりと広がる。カツオのたたきに玉ネギスライスが和食の定番なら、江見シェフのアレンジは、こうなるのかと驚きつつ、シャンパンを飲み干した。魚料理はスズキに、焼きナスのソースとオクラのタップナードソースで。

 

肉料理
肉料理

 

 カトラリーは各々のテーブルの引き出しにあり、肉用のナイフはテーブルにさしてある。このナイフの出番がやってきた。メインは宮城の32℃豚。脂が溶けるのが32〜34℃と低いのが特長で、口に入れるとすぐに溶けて豚肉のもつ甘みがあふれ出る。トリュフ入りのマッシュポテトも風味豊かで、軽めのものをとソムリエに選んでもらった、カリフォルニアのピノノアールがすっと喉を通る。

 「昇陽窯の器でどうぞ」。前に来たときに丹波焼の話をしたのを覚えていてくれたのだ。丹波焼の作家さんたちとは親しくさせていただいているので、後日、窯元の大上裕樹さんに会ったときに、もちろん報告しておいた。

 自然と大地をテーマにしたエスピス。店内に土壁を作り、坪庭には自然石と流木で大地の呼吸を表現。「食べ物は自然と大地の恵み、感謝を込めて料理したい」と江見さん。その自由な発想は、ひと皿ごとに驚かされるポイントがあって、とても楽しい。今度はカウンター席でシェフのテクニックをのぞき見しようと思う。私に作り方は真似できないだろうけど。

 


◆ MENU(税・サ別)
ランチコース 3,800円~
ディナーコース 8,500円~

◆ Data
ESPICE(エスピス)
電話:078-333-1919
住所:兵庫県神戸市中央区中山手通2-3-25 メゾンエスプリ生田1-1
営業:12:00~15:00(13:30LO)、18:00~22:00(20:00LO)
休み:不定休


◆ Writing / 松田きこ
(株)ウエストプラン代表。兵庫県西宮市在住。食・観光・人物取材に日本中を飛び回る。ライター歴20年以上。編著書「神戸・阪神間 おいしい酒場」「くるり西宮・芦屋・東灘・灘」「くるり丹波・篠山」他
http://www.west-plan.com/